エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント(ECM)

文書情報マネジメント・システムには目的に応じた機能を提供するドキュメント・マネジメント・システムやナレッジ・マネジメント・システム、レコード・マネジメント・システム、Eメール管理システムなどがあるが、組織の部門を越えた情報共有と運用・管理を実現する統合的な文書情報マネジメントを、ECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)システムと呼んでいる。電子化文書(紙文書)や電子文書など全てのコンテンツを、文書情報(コンテンツ)の発生時点から保存、廃棄に至るコンテンツ・ライフサイクル管理と、組織内の全てのデジタル・コンテンツを一元的に管理する機能を提供する。また、コンテンツ単位の履歴管理など、組織の内部統制に対応したコンテンツ管理が可能である。

文書情報マネジメント・システムでは、文書イメージを保存・管理するだけでなく、従来のペーパーワークをネットワーク上で実現するため、業務の流れ(業務プロセス)を管理するためのソフトウェアである「ワークフロー・ソフトウェア」が用意されている製品も多く提供されている。

1.1.1 文書情報の定義

広義な文書情報とは、「人の意思を、文字その他の記号や信号でアナログ記録メディア(紙、フィルム、写真、ビデオ、録音テープ等)やデジタル記録メディア(磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリー等)に記録したもの」をいう。JIIMAの定義では、「組織の構成員が職務上作成し、または取得した文書、図書及び電磁的記録(電子的方式、電磁的方式その他、人の知覚によっては認識することのできない方式で作られる記録)をいう。」と定義しており、情報公開法における「行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図面及び電磁的記録」の定義とあわせて、従来の文書・書類、図面はもとよりPC等で作成した電子文書、表計算、イメージ情報、映像、音声やEメールなど、電子的に作成または取得した全ての情報(コンテンツ)が対象となる。

1.1.2 電子文書と電子化文書

 文書情報には、最初からPC等の装置で紙を介することなく作成される文書(電子文書)と紙の文書からスキャナ等で該当イメージを採取し、デジタル情報として管理するために作成されたイメージ情報(電子化文書)がある。

  1. 電子文書は、狭義の意味ではワープロ、PC上のソフトウェア等で作成されたコードデータで構成されたものを指し、広義の意味では電子化文書を含む。
  2. 電子化文書は、紙文書及びマイクロフィルム文書をコンピュータで取り扱えるようにしたもので、いわゆる「イメージ情報」を指す。

1.2 文書情報のライフサイクル・マネジメント

文書情報には、作成(入手)、処理、保管、保存、廃棄のフェーズからなるライフサイクルがある。文書情報のライフサイクル・マネジメントとは、取り扱う組織、文書情報の目的や性質により文書管理規定や構成管理規定等に従って適切に管理することをいう。

ライフサイクル・マネジメントを実施するためには、個々の文書情報に対し、プロパティ(属性)情報を持たせる必要がある。例えば、文書情報のタイトル、分類、キーワード、管理番号、管理者、作成日、保存期限、原本の所在等の文書情報の属性情報をプロパティ情報(メタデータ)という。一般的に、プロパティ情報は、作成フェーズで個々の文書情報を管理するためのユニークな情報を付与した後、その後の処理、保管、保存、廃棄の各フェーズで適時情報が追加されていくことになる。

文書情報のライフサイクル・マネジメント
  1. 作成(入手):文書情報の作成、入手するフェーズで、構成管理規定等による分類、作成(入手)日、作成者、キーワードなどのプロパティ情報が付与される。
  2. 処理:文書情報の目的に応じた処理工程(承認決裁、公開、配布など)の流通過程を言う。 このフェーズで、文書のアクセス・コントロールに関する情報、改版履歴、処理履歴などのプロパティ情報が追加される。
  3. 保管:文書情報を必要に応じて即座に参照できる状態を保持するフェーズである。処理フェーズ後、数ヶ月から1年間ぐらいの参照頻度が比較的多い期間が該当する。このフェーズでは、保管期間、保管場所、参照履歴などのプロパティ情報が追加される。
  4. 保存:保管期間を終えた文書情報を文書管理規定等による長期保存をするフェーズをいう。 このフェーズでは、保存期間、保存場所、参照履歴などのプロパティ情報が追加される。
  5. 廃棄:文書管理規定等で定められた保存期間、ルールに基づいて文書情報を廃棄することをいう。 文書情報には、電子データや電子化データに付与されたプロパティ情報などと原本となる文書情報(紙文書)が含まれるので、媒体によって廃棄方法が異なる。

1.3 文書情報マネジメント・システムの導入メリット

 文書情報マネジメント・システムの導入は、デジタル化されたビジネス環境の構築による検索性、生産効率の向上だけでなく、コンテンツのセキュリティ管理、履歴管理がシステムレベルで実現でき、組織のコンプライアンス向上を図ることが可能となる。特に、2008年度に施行が予定されている「金融商品取引法」(日本版SOX法。2006年6月7日、可決成立)の内部統制における業務プロセスの適正化、事業継続計画(BCP)対応など、企業の根幹をなす文書情報の適切な管理体系を企業レベルで実現することができるシステムが、統合文書情報マネジメント・システムである。

文書情報のライフサイクル・マネジメント
  1. コンプライアンス(Compliance) 規制遵守や内部の情報セキュリティ方針を遵守することが可能となる。ドキュメントの所在とセキュリティを保証することにより、内部統制で求められる高信頼性の監査要件に対応できる。
  2. コラボレーション(Collaboration) 業務処理のために部門内のワークフローや情報の共有や協業作業などから、情報を必要とする組織内の全てのビジネスユニットに協業モデルを提供できる。ますます分散するオフィス環境でも、高い組織連携と生産性を維持することが可能となる。
  3. 費用対効果(Cost) ドキュメントの作成、保存、配布のコストが削減できる。処理時間の短縮や情報の即時検索、業務プロセスの効率化により人材の再配置や業務プロセスを効率的・効果的な業務に活用でき、高い導入効果が実現できる。
  4. 継続性(Continuity) BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)など、24時間365日の企業活動を維持するために重要不可欠な情報資産をデジタル化して管理、活用することは、ミッションクリティカルな業務遂行上、重要な課題である。文書情報マネジメント・システムは、迅速なディザスタリカバリの実現など企業活動の継続を支援するシステムといえる。
  5. 顧客関係(Customer Relationship) 顧客の要求に対してリアルタイムに応えることができる環境を構築することで、顧客満足度を高めると同時に、顧客との良好な関係維持のためのハイレベルな顧客サービスが実現できる。